かつて冬のシーズンだけで1年分を稼ぐといわれたウィンターリゾートだがレジャーの多様化と不況により入場者数は大幅に減少した。しかし、サービスの質の向上によりいままた、新たな顧客を開拓しつつある。
かつてバブルで踊った90年代には、スキー人口は1500万人といわれた。 当時はどのスキー場も人であふれ、ウィンターシーズンだけで1年分の収益を稼ぐほどだった。 ゲレンデのレストランに行けば、オーダーをこなすのに追われるあまり、工場で作られた真空パックを温め、お客さんの目の前で器にあけるといった光景も決して珍しいものではなかった。 バブル崩壊によりスキー人口が減少し始めると、スキー場は次々と経営破たんに陥り、銀行の手に渡ったりオーナー会社が点々と変わるようになる。 今年は雪が不足気味で、スキー場の経営は相変わらず厳しいものがある。 しかし、今シーズンに改めていくつかのスキー場をまわってみて、この不況が消費者にとってはかえってメリットにつながっているケースがいくつもあり、ウィンターリゾートが回復へのステップを着実に歩んでいく姿を目の当たりにした。
「リゾート」というからには、お客様をもてなすホスピタリティが求められる。それは接客の姿勢であったり、余裕のある空間、サービスの使い勝手のよさ、コストパフォーマンスなどに表れる。
ホテルのバイキングもあなどれない。”スキー場にあるホテルのバイキングにうまいものは期待できない”という時代は変わりつつある。
スキーレンタルも変わりつつある。 パインリッジリゾート神立をはじめとする上越のいくつかのスキー場にテナントとして入っているのが、「クレブ」のブランドバイキングレンタルシステムだ。 有名スキーブランドの上位機種が揃い、ウエア、ブーツ、スキーを好みの用具でチョイスすることができる。レンタル時間内であれば何度でも用具のチェンジが可能という画期的な方法を導入している。 10年以上前のスキーレンタルは、使い古されて何年も経っているような用具しか借りることができなかったり、まして上級機種の選択肢はなかった。 ユーザーにとってみれば気になるブランドを試すことができ、次の購入のためのいい試乗にもなる。
ゲレンデにあるレストランも様変わりしている。 ひと昔前であれば、たいしておいしくもないカレーやラーメンといった定番メニューを、信じられないような価格で提供するのがゲレンデにあるレストランというイメージだった。 コンビニエンスストアがスキー場の近くまで進出してくると様相が一変。おいしくない食事を食べるぐらいなら、コンビニのおにぎりで十分という風潮を生んだ。
しかし、ゲレ食も変化している。スキー場直営のレストランがある一方で、町なかにある有名レストランがテナントとしてゲレンデに進出。味のレベルが格段に上がっているケースが少なくない。 たとえば、湯沢高原のゲレンデ中腹にあるレストラン「アルピナ」は、岩原で10年以上にわたって食通をうならせてきたイタリアンレストランの姉妹店だ。ピッツァはオーダーを受けてから生地を伸ばし、石窯で焼き上げる。 クリスピーでありながらもちもちした食感の生地は、都内にあるイタリアンと比較しても遜色ないほどおいしい。
上越にある某スキー場のレストランに10年以上テナントとして出店しているオーナーは、インターネットで情報が一瞬にして広まる時代の流れに驚きを隠せない。 いつも同じ業者から仕入れている南魚沼産のコシヒカリ。ある年に、微妙に乾燥具合が悪く、つやが出ないものを仕入れたことがあった。いつもこのご飯を楽しみにしているスキーヤーはその違いにすぐに気づき、ネットに”味が悪くなった”と書き込んだ。 たしかに味が落ちたことは事実だったのだが、この悪評から立ち直るのにかなりの時間を要したという。それよりも、お客様の舌がいかに敏感で、築き上げてきた信用は一瞬にして崩れるのだというのを痛感した。 不況によるスキーヤーの減少は、スキー場の経営を深刻な状態にまで落とし込んだ。しかし、一方で、消費者の立場に立てば悪いことばかりではなかった。 いま、スキー場のサービス、ホスピタリティは大きく変化を遂げている。この流れが本物であるのなら、また多くのスキーヤーが戻ってくるのは遠い日のことではない。